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生きること。

彼が闘った病気は、
とても高い確率で『FIP(猫伝染性腹膜炎)』と診断されました。
ドライ型からウェット型へ移行するタイプだったようです。
CAPEV0CY.jpg
ウェット型の症状が確認されたのは、
わずかな腹水とお腹のしこりが確認された
東京に行く日のことでした。

その日は朝から明らかにいつもと様子が違いました。
フラフラな身体を這わせながら2階に登ってきたり、
すごい力で一心不乱に爪とぎをしたり、
何とも言えない大声で泣き叫び続けていました。
きっとこの家から離れたくなかった彼の、必死の抵抗だったような気がします。

入院していた彼を迎えに行った時、
意識はもうほとんど無かったのですが、
私の前で短くわずかに鳴いてくれました。

先生からは”温かくして、優しくしてあげて下さい”とだけ言われました。
そして、わずかな余命宣告もないまま
彼は息を引き取りました。
0615+009_convert_20090615160737.jpg
検査をした時期が、たまたまピークと重なっていたのかもしれませんが、
恐ろしくコロナウィルスの抗体価がとても高い子でした。
最後の血液検査では、肝臓の数値は測定不能でした。
抗生物質に反応しない色々な症状がずっと続いていることも、
この子はもうFIPの症状という症状のほとんどを発症しているのではないだろうか…と
目に見えて判るぐらい当てはまっているようでした。
そして生体検査では、癌やリンパ腫などの、
他の病気を疑う可能性は低い結果でした。
PCR検査では、その数値が怖くて震えるくらいの異常な結果でした。
腸内以外で確認された異常な数値のコロナウィルスは、
当然FIPウィルスということなのでしょう。
それでも私達はこの病気を、
『FIP』だと確定することが出来ない難しさを知りました。

何でもないコロナウィルスが、脅威的なFIPウィルスに突然変異して、
命を奪う病気を発症してしまう原因ですが、
一般的には生活環境やストレス、免疫力の低下などの
複合的な要因…とされているようです。

-もしウチに来ていなければ、もっと長生き出来たのかも知れません-
しかし、いくらどれだけどんなに考えても、
この子が亡くなった本当の原因は、
もう私達には解けません…。
0427_convert_20090427172336.jpg
人は無意識に、つらい事実を無かったことにしたり、記憶から排除してしまったり、
或は他の出来事に摩り替えようとする防衛本能が働くそうです。
私は彼が病気で苦しんでいたつらい姿や、
亡くなった事実から目を逸らすことが出来れば、
どんなにいいだろうと思いました。
楽しい記憶だけ残して、辛い記憶は思い出せなくなればいいのに…と、
何度も思いました。

でも…
治らない病気になってしまったことも、まっすぐに闘った凛とした姿も、
亡くなったことも含めたそのすべてが、
彼が”生きたこと”なんですね。

私達に映っていた彼は、
どことなく穏やかで、元気いっぱいで、いつも瞳がキラキラしていました。
私達は間違いなくこの子のおかげで幸せでした。
この子も幸せだったと思うんです。

彼はいつも私達に寄り添ってくれ、
小さい身体で一生懸命に私達を愛してくれました。
きっとこの子はそのために産まれて来てくれたのではないでしょうか…
と思っています。

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